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半分の月がのぼる空 映画撮影と巡礼旅行(3) −2日目 午前−

5月9日(土) 2日目 −朝−

起きるとそこには琵琶湖が広がっていました!
もやがかかったようになっていて、あまり良くは見えなかったんですが、いよいよ遠くに来たんだという実感が湧いてきました。

10時前に京都駅に到着。
京都辺りまで来ると、もうすっかり都会って感じですもんね。
(完全に田舎者の発言になってますけど……)

京都駅にて朝飯を購入。

「おにぎり一個」

……自分には、伊勢でやらなければならない使命がありました。
その使命のためにも、朝飯はほんの少しに抑えておく必要があったのです。
さて、その使命とは…………?

そこから近鉄に乗り換え。
そこそこ近いイメージがあったんですが、京都から伊勢まで、特急でも2時間くらいかかります。
よく考えてみると、京都府から奈良県を越えて三重県に行くことになるんですもんね。
そりゃ遠いわな、と今更ながら実感。

都会の雰囲気を醸し出していた京都からどんどん離れて行き、田んぼや畑が広がる景色が続き……。
12時頃。

伊勢到着(宇治山田駅の写真)

ついに念願の伊勢に着きました!

5月9日(土) 2日目 −まんぷくとの戦い!−

伊勢に着いたのはお昼だったので、まずは昼食をとることにしました。
昼食の舞台へと移動するわけですが、「伊勢市駅」ではなく敢えて「宇治山田駅」で降りたのは、昼食の舞台をあらかじめ決めていたからでした。

まんぷく食堂 外観

そう……原作ファンにはおなじみの食堂……「まんぷく食堂」です!
宇治山田駅のすぐ南側にあるまんぷく食堂は、その安さとボリュームから、腹を空かせた学生などがよく利用する食事処となっています。
原作者の橋本さんの思い出の場所としてあとがきでも言及されていた場所ですが、小説の舞台としては第8巻に収録されている短編『蜻蛉 -dragonfly-』に登場しています。
外観はそれほど大きいとは思えず、実際中に入ってみても15人くらいしか座るスペースがないくらいの大きさでした。
スペースを少しでも有効活用するためか、店員の方がすぐ目の前で料理を作っているくらいの密着度。
まさに、地元に昔からある店という雰囲気が感じられて心地よかったです。

さて、それだけならどこにでもある小さな店ですが、この店には名物があるのです。
その名も、「唐揚げ丼」
小説の主人公の戎崎えざき裕一曰く。

「要するに揚げたての唐揚げを卵とじにし、それをご飯の上に乗っけただけの食べ物なのだが、これがなかなかうまいのだ」
『半分の月がのぼる空』第8巻150ページ より

……とまで言われては、食べてみないわけにはいかないでしょう!
店のお兄ちゃんに「唐揚げ丼大盛り」と頼んだ後、改めて店内を見回してみると、何と映画のエキストラ募集のチラシが貼ってありました。
たぶん、ここも『半月』(以下では『半月』を『半分の月がのぼる空』の略とする)の舞台になっているので、頼んで貼って頂いたんでしょうね。
ネットでチラシを見ただけの自分が、遥か遠くから来てこのチラシを見ているんだと思うと、 ちょっと感慨深いものがあったり。

少し待って、お兄ちゃんが持ってきた唐揚げ丼がコチラ。

から揚げ丼

「なにしろ並を注文してもドンブリ山盛りのご飯なのに、どうやらあのおじいちゃんは大盛りを、しかも特盛りを頼んだらしい。特盛り用のドンブリの大きさはもはやドンブリという名詞を使うのがためらわれるほどで、どちらかというと洗面器に近い」
『半分の月がのぼる空』第8巻152ページ より

……そう、この店の唐揚げ丼の特徴は、その量にあるのです。
下手に大盛りや特盛りを頼もうものなら命取りになるとまで言われており、万全を期すため、僕はこの日の朝食はおにぎり一個で済ませたのです。

しかし…………実際に唐揚げ丼大盛りを目の前にした自分は、こう思いました。



案外、そうでもないんじゃね?


スイカを半分に切って、赤い部分全てが唐揚げ丼になってるようなものを想像してしまっていた僕は、少し拍子抜けしたような思いがしました。
少々の残念感とともに食そうとしたその時…………原作小説の一節を思い出したのです。

「此の店の唐揚げ丼なる食べ物はじつに美味ださうでありますが、しかし何やら不穏な味付けがなされてをり、其れで幾多の臣民が泣かされてゐるとのこと、其の唐揚げ丼を見事に食し、不逞ふていなる店主に目の幅涙はばなみだを流させてやる積です」
『半分の月がのぼる空』第8巻137ページ より

唐揚げ丼になされている「不穏な味付け」の正体とは……。

「なぜかこのまんぷく亭では唐揚げ丼にどっさりコショウを振りかけるのだ。しかもそのコショウの量が毎回同じではなくて、たまにやたらと多かったりする」
『半分の月がのぼる空』第8巻151ページ より

コショウです。
上の写真では少し分かりにくいかもしれませんが、コショウが全体的に振りかけられているんですね。
入口に「全国でまんぷくだけ」というキャッチコピーと共に唐揚げ丼を宣伝しているのは、丼にコショウがかけられているからなのでした。
(たしか、原作者の橋本さんが、全国でここだけだと発言していた気がします)

小説の中から最大限学び取った僕は、今度こそ食い付きました。
食べてみると……コショウはそれほど感じられませんでした。
唐揚げは軟らかく、醤油っぽい味付けがされつつも卵とじにしてあるために上手く中和されて、口当たりはまろやかな印象でした。
ご飯がつゆで汁だく状態になっているため、一気にかき込むことも可能。
これは、上手い!
こんな店が地元に欲しかったなあと思いながら、意気揚揚と食べました。



雲行きが怪しくなってきたのは、いつの頃からだったでしょうか。
最初は調子よくかき込んでいたのに、半分を過ぎた辺りで急にペースが落ちました。
先程書いたように、脂っぽいとかそういったことはないため、胃もたれという感じではありませんでした。
そこにあるのは、絶対的な質量でした。

部活を引退して早二年。
食べる量が当時の2/3から半分近くまで落ち込んだ自分の実力を、どうやら甘く見ていたようです……。
まんぷく食堂のみなさん、ごめんなさい。
案外少ないとか言ってた自分が恥ずかしい……。

でも意地でも残したくないので、そこからは気合いで乗り越えにかかります。
雪国の力を見せつけてやらねばならぬと、ご飯をかき込み……。

ゲホゲホ!!

コショウの洗礼が襲いかかりました。
小説に書いてあった通り、コショウの量は一定ではなく、ちょうど残っていた側に多くかかっていたのでした。
最後の方は、腹はいっぱい、コショウで辛い。
まんぷく食堂の実力を、まざまざと見せつけられる結果に終わりました……。

5月9日(土) 2日目 −ビジネスホテル山本へ−

腹の苦しさに耐えながら、進路を伊勢市駅の方へ。
そして駅前から見ることができるのがこちら。

ビジネスホテル山本

「ビジネスホテル山本」です。
こちらは一見ごく普通のビジネスホテルに見えるのですが、『半分の月がのぼる空』のファンにとっては少し特別な場所であったりします。

ここのホテルは、地元のNPO法人自利利他じりりたの事務所となっているのですが、その自利利他の代表者の山本さんは、『半月』を支援されているのです。
では、なぜ支援することになったのか。
それは、「そのきっかけとなった場所」を紹介してからにするとして……。

今回伊勢に行くにあたって、山本さんと何度も連絡をとり、伊勢滞在を円滑に進めることができました。
山本さんにご協力頂いたのは、ビジネスホテル山本へ宿泊させて欲しいということと、自転車を貸して頂いたことです。
宿泊に関しては、自利利他のサイトから半月ファンであることを書いて送れば特別料金で宿泊させて頂けるとのことであり、また、伊勢市内を移動するための自転車も無料でレンタルできるので、お言葉に甘えさせて頂きました。

山本さんとも少しだけお話したのですが、『半月』の映画実行委員会を運営されていることもあり、メールやブログの文面から想像した通り、かなり忙しいご様子でした。
多忙な中ご協力頂けて、感謝しております。
皆様も、伊勢滞在の際はぜひビジネスホテル山本をご利用くださいね。

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2009年9月10日 更新