朝、無事に家に着きました。
……そして、ここからが本番なのです。
……午後から学校があるのですから。
突発的に企画したこの旅行。
家族もあまりにも突然のことに仰天していましたが、僕自身も驚いていました。
どこからそんな力が湧き出てきたのかと。
……それはたぶん、原作の力に他ならないでしょう。
三年前に、絵を見て何となく気になり、気まぐれで読み始めた『半分の月がのぼる空』が、後々僕の人生に大きく影響してくるとは、当時夢にも思っていませんでした。
伊勢に行ってみたいとは思っていたものの、本当に行くことになることも、全く想像がつきませんでした。
原作中でも、主人公の裕一は、何か目に見えない力によって突き動かされる場面がたびたびありました。
それが作中を飛び出し、現実の世界にも影響を及ぼした。
現に影響を受けた人間がここにいる。
『半分の月がのぼる空』の力に突き動かされた人間は僕だけではなくて、他にもいた。
僕は実際に、そんな人たちを伊勢で目の当たりにしてきた。
世の中では、『半分の月がのぼる空』なんて取るに足らない作品だという人も数多くいる。
その人たちの言い分も分からないわけじゃない。
でも、僕が『半分の月がのぼる空』を読んで、伊勢に行ってきて、感じたことを、見てきたことを信じたい。
これは、色んな人を突き動かしてきた名作なんだって。