朝6時半に伊勢市駅前からバスを出すということだったので、それに合わせてホテルを後に。
そして、制服姿の学生とその偽物(自分もですけど)の集団を発見。
その場の印象では、地元の現役高校生が結構いました。
その中でいい年した大学生が高校の学ラン着てたので、ちょっと恥ずかしかった(笑)。
バスに乗り込むと、実行委員長の山本さんがご挨拶。
この日は都合が悪くて行けないそうでしたが、忙しい様子は周知の通りなのでやむをえないでしょう。
行けなくて残念そうでした。
2台のバスは撮影会場へ。
「正式に公開される前にネタばれ情報は出さない」というのが自分の基本方針なので、現時点では撮影現場でどんなことがあったか書きません。
撮影現場のレポートを期待してここまで読んできた人もいるかと思うのですが、そこは我慢してください。
映画が公開されたら書くつもりですので、興味があればその時期にまたいらしてください。
現段階で公式に情報が挙がっていることに対して少しコメント。
秋庭里香役の
見てみてびっくり。
「里香だ!」
すごくイメージにぴったり。
現時点で里香役やってもらうなら最善の選択ではないでしょうか。
とにかくすごかったです。
鳥肌立ちましたとも。
撮影中も、彼女の役者魂を見せつけられまして……そのことについてすごく書きたいんですが……来年まで耐えます。
今から映画で里香を見るのがすごく楽しみです。
主人公の戎崎裕一役の
(忽那さんの衝撃が強すぎたかもしれませんが)
劇中で奮闘してくれることを期待してます。
夏目吾郎役の大泉洋さんは……撮影現場にはいませんでした。
(記憶が正しければ、あの撮影の一、二週間くらい前に決定したとかで、伊勢に向かう手はずもまだ整っていない段階だったとか)
水曜どうでしょうファンの自分には残念。
撮影現場で雑談しているときに夏目先生を大泉さんがやると知った時の衝撃と言ったらありませんでしたとも。
原作では二枚目の敏腕外科医の設定となっている夏目先生だけに……二枚目とは方向性が違う大泉さんというのは果たしてどうなんだろうと(笑)。
色んな意味で見るのが楽しみな登場人物の一人です。
公式サイトにコメントが載っていましたが、大泉さんのコメントには笑わせてもらいました。
ナイス大泉さん!
ちなみに……大泉さんの配役に関して、某巨大匿名掲示板では違う情報が流れていたようなんですが……そっちの配役の方がある意味しっくりきました(笑)。
主題歌は阿部真央さん。
もちろん現場では見ていません。
公式サイトで阿部さんの曲を聴いてみましたが……この作品に合うのか方向性なのか未知数ですね。
主題歌となる『15の言葉』のタイトルがどんな意味を持つのか、原作を読んでいた僕でも現段階では分からないので、気になるところです。
午前7時半に撮影現場に到着したものの、午前の部が終了した午後2時過ぎの時点で帰らなければならなかった僕は、多くのエキストラが残る撮影現場から泣く泣く立ち去ることに。
そして、バス停で時間を確認した僕の頭の中によぎったもの。
「か、帰れない……?」
この時点で午後2時10分。
バス停には午後2時42分発と書かれていました。
伊勢市駅から撮影現場までかかった時間は1時間弱。
それを考えると、バスがどう頑張ったところで伊勢市駅に着くのは3時半を過ぎるでしょう。
一方、僕は伊勢市駅前から3時20分に出発する高速バスに乗ることにしていました。
それに乗れなければ、近鉄の特急に乗ったとしても帰りの寝台特急に乗ることができません。
つまり。
「か、帰れない……?」
こんな遠い場所まで来て、帰れなくなる……?
全身から血の気がサーっと引いて行きました。
ちなみに、後で調べてみたところ、もし撮影現場を午後2時42分に出発するバスに乗っていたとしたら、伊勢市駅前到着予定が3時47分でした。
全くお話になりません。
正確な到着時刻が分からないまでも、概算でタイムリミットに間に合わないことは明白。
どっちにしたって、のんびりバスを待ってたんじゃ帰れなくなりますから、別の方法を探すしかない。
冷静になれ……冷静になるんだ……!
とりあえず、もらったロケ弁を食べながら、必死で考えていました。
目の前に広がるのは海。
その広大さは、今の自分に絶望感を与える……。
背後に広がるのは山。
その、見る者を圧倒する巨大さは、今の自分に絶望感を……。
などというネガティブな考えを必死に振り払いつつ、懸命に考えます。
バス停の前を通り過ぎて行く車。
彼らは、車で行きたい場所に自由に行けるのだと思うと、思うように身動きがとれない自分がもどかしく感じます…………ん?
……ああ……そうだよ…………だから……!
彼らに連れて行ってもらえばいいんだ。
ヒッチハイク。
郊外へ続く国道沿いで、行き先を書いた段ボールなどを持ってヒッチハイクやっている人をごくまれに見かけることがありますが、まさか自分があっち側の立場になる日が来るとは夢にも思っていませんでした。
しかし、生きるか死ぬかの瀬戸際。
なりふり構ってる場合じゃありません。
街から大きく外れた場所のため、ご覧の通り、ガンガン車が通る道というわけではありません。
迷ってる暇があったら行動しなければ……!
バス停の前に陣取り、車が通りかかるたびに手を振って呼びかけます。
しかし、世の中は非情なもの。
ほとんどの車は見向きもしてくれません。
露骨に不審な顔を見せて来ます。
……こっちだってやりたくてやってるんじゃないんだ。
頼む、止まってくれよ。
少しでも止まってもらえるよう、ちょっとだけ道路に身を乗り出し、目立つように、ボディが真っ赤なケータイを手に持って手を振ってみますが、効果は全くなし。
時間だけがむなしく過ぎていきます。
時刻は2時半を回り、もはや車が止まってくれたとしても、高速バスに間に合うかどうかもわかりません。
それでも、何もしないよりはマシだと手を振り続けました。
ヒッチハイクを試みた台数が20台を過ぎた頃、背後でキキーという音が鳴り響きました。
あれは、急ブレーキをかけた時の独特の甲高い音……!
振りかえると、白いワゴン車が止まっていたのです。
車に乗っていたのは、まさに海の男といった風情のおじさまが一人。
事情を必死で説明すると、「とにかく乗れ」との返事。
よっしゃああああああああああ!
時刻は2時35分。
間に合うかどうかも分からない、二人のギリギリの疾走が幕を開けたのでした。
冷静に考えてみると、今のご時世でよく止まってくれたなあと思います。
拾ってくれた方も同意見で、昨今の情勢を考えると止まるのは躊躇したと話していました。
(ちなみに、このヒッチハイクした話を人にすると、例外なく、その車よく止まってくれたな、という意見と、切羽詰まっていたとはいえ、お前よくヒッチハイクやったな、という意見が返ってきました)
その方は、海に釣りに行く途中だと言っていました。
が、そこら辺のくだりはまた面白いもので、何でも、早朝に一度釣りに出かけていたのですが、釣り場に着いてから忘れものに気付き家に戻ります。
そして再び釣りに行こうとしたところを家族に捕まり、家族を車で送っていく羽目に。
車で送迎し、さてやっと釣りに行けると出発したところで、僕を見つけて拾ってしまったと。
魚は釣れなくて人間を釣ってしまったわけですね、と僕が言うと、大笑いしていました。
「まさしくその通りや」と。
「ところで、あんた中学生?」
…………大学生なっても、高校生ですか? って言わることはままありましたとも。
たまたま高校生の弟と二人で大学に行った時は、弟の方が大学生だと思われましたよ。
……それはいいんです。
仕方ないです、認めましょう。
でも、さすがにこの歳なって中学生に間違われるとは思いませんでした……。
へこみます……。
でもまあ、本当に、いい人に拾ってもらえてよかったです。
基本的によくしゃべる人で、道中ずっと会話してましたし。
終始楽しい雰囲気で会話したおかげで、切羽詰まった心も落ち着き、ホッと一息つけました。
!!!!
『前! 前えええええ!!!!!』
調子よく会話していた僕らの目の前に広がっていたのは、バイクと正面衝突する一秒前の光景でした!
慌ててハンドルを切り、バイクが運転席の数十cm横をかすめて行きました……。
……ホッと一息つけたなんて嘘。
終始ハイテンションでした(笑)。
どうやら、話に花が咲きすぎて、車を追い越した後、元の車線に戻るのを忘れていたようです。
しかも、僕が声を出す寸前、その方は完全に顔をこちらに向けて話してましたし……。
あの時ばかりは、冗談抜きで死が頭をかすめました。
僕がほんの少しでも声出すのが遅れていたらどうなっていたことか……考えただけでぞっとします。
そんなこんなで、退屈する暇もなく駆け抜けていき、伊勢の町並みも見えて来ました。
どうやら間に合いそうです。
どうしてあんな場所にいたんだという話にも当然なり、映画の撮影をしていたことを話しました。
原作は、地元の伊勢出身の作家、橋本紡さんが書いた『半分の月がのぼる空』であることも添えて。
知らない、と言ってました。
残念。
ちなみに、この旅をした中で判断すると、地元の人にはあまり『半月』は知られていませんでした。
車で送ってくれた方も地元の方でしたが、全然聞いたことがないと。
伊勢市内の店には映画の宣伝ポスターが貼られていたことも話しましたが、そんなもの見たことがないと言っていましたし。
これを書いている時点で映画公開まで半年くらいになりましたが、この頃よりは少しは地元人にも知られる作品となっていてほしいです。
伊勢市駅前には3時10分頃着きました。
運転をかなり頑張って頂き、何とか事なきをえました。
送ってくださった方、本当にありがとうございました!
家に帰ったら話のネタにすると言ってました。
事故を起こせないような状況で思う存分語ってくれていれることを祈ります(笑)。
無事に3時20分発の高速バスに乗り込み、ホッと一息。
もしあそこでヒッチハイクしなかったら、絶対間に合ってません。
正直、かなり勇気がいる行動でしたが、結果オーライ。
本当に良かったです。
バスの中で久しぶりにまったりしていると、あることに気付きます。
誰も乗ってない。
運転手と僕しかいません。
まあ、あれだけ大変な思いをした後だったので、誰もいなくて好都合。
思う存分ゆったりできました。
京都駅に着いた僕は、京都にいる友人と再会。
いやー懐かしい。
実に一年ぶりですからね。
彼はこのホームページを熱心に見てくれる数少ない人物なのですが、会う前にこんな濃い一日を送っていたことを想像できたでしょうか。
たぶん予想してないでしょう(笑)。
友人と別れ、電車に乗り込んだ自分。
……そう、一大決心して始まったこの旅も終わりが近づいてきました。
外には、旅の終わりを告げるかのごとく真っ赤に燃える夕日。
哀愁を感じさせるオレンジ色に、何だか鼻の奥がツンとしました。
鞄からオーディオプレーヤーを取り出し、かけた曲は樋口了一さんの『1/6の夢旅人』。
「水曜どうでしょう」を見て以来、旅に出たらこの曲をかけようと決めていました。
先程の写真のような夕焼けを眺めながら聴くと、寂しさだけでなく、元気も出て来ました。
「やり切れないこんな想いが 今日の雨を降らせても
新しいこの朝がいつものように始まる
そんな風に僕は生きたいんだ 生きていきたいんだ」
『1/6の夢旅人』作詞:樋口了一 歌:樋口了一
……そうだよなって。
また明日から始まるんだから頑張ろうって、そう思いました。
さて、景気づけに飯でも食おうと思い、鞄を開けようとしたところでハッとしました。
……飯、買ってないじゃん。
前へ(2日目 聖地巡礼) / 一覧 / 次へ(4日目・あとがき)