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青春18きっぷで青春しよう!(1) まえがき

前口上

君は知っているか。

青春18きっぷの存在を。

全国のJR全線に乗り放題のフリーパス切符。
わずか11,500円で、5日間も旅ができてしまう、悪魔の切符なのだ。

君は知っているか。

5日間乗り放題の甘い囁きにそそのかされ、一週間も一人で旅をした男がいることを。

これは、そんな男の物語。

……君は、知っているか。

旅とは、かくも素晴らしいものだということを。

求めるなら最後まで

これまで、いくつか旅をしてきたわけなんですが、ここらでいっちょ長期の旅行をしてみたいなと考えたわけなんですね。
時期的にも、頑張れば日程が空くタイミングでしたし、メッチャ頑張れば僕のやりたいあれこれを詰め込むことができそうだったので、こりゃもうやるしかないだろうと。

問題は当然金なわけですが、以前から興味のあった激安切符「青春18切符」を駆使すれば、安めに収まるのではないかと考えた次第です。
あの切符自体も、一人で使う場合は使い切るのに5日かかるわけで、使いどころが難しいのですが、長期で旅するなら全く問題なし。
あらゆる条件が、僕に「やれ」と悪魔の囁きをしてきたわけですね(笑)。

それに。

大学も、2年・3年と進級していくうちに忙しくなっていくことは、先輩たちを見ても重々承知でしたから、旅にうつつを抜かせるのもこの辺りが最後になるかもしれないという予感がありました。
どうせ最後になるなら、悔いを残す余地もないくらい思いっきり楽しみたい。
そう考え、僕が考えうる限りの最高の旅をセッティングしたのでした。

……その結果、100万人いたら、99万9,999人が「やりたくない」と言いかねない、恐ろしいプランとなったわけですが。

……いいんです。
僕が、僕の責任で、僕のために用意したものなんですから。

旅の前提

今回の旅行期間は、2010年3月24日(水)〜31日(水)までの8日間。
限界まで日程を引き伸ばした結果、こうなりました。

……今考えたら、よく特に不安もなくできたなあって感じですが。

まず、移動手段として使うのは、当然JR。
青春18きっぷで乗れるのがJRに限られているから当たり前ですね。

青春18きっぷについて、もう少し詳しく説明すると。
全国のJR全線に乗り放題のフリーパス切符ということになります。
よく勘違いする人がいるのですが、18歳前後の人しか使えないとかそういう年齢制限はなく、全年齢で使えます。
元々、お金のない学生に主眼を置いて作られたものなのでこうした名前になっているというだけです。

乗り放題という言葉の響きはいいのですが、いくつか条件があります。

まず、乗れる列車は普通列車・快速列車のみ。
つまり、急行列車・特急列車・新幹線には乗ることができません。
これらに乗るためには、普通にその区間の「乗車券」プラス「急行券・特急券」の料金が必要になります。
安さと引き換えに、距離を稼げる新幹線なんかは利用できないわけですね。
快速列車は使うことができるので、利用出来る区間であれば、快速を使えば多少時間短縮にはなりますね。

そして、使えるのは「5日分」。
青春18きっぷの値段は11,500円なので、一日当たり2,300円以上乗ればお得ということになります。
また、この「5日分」というのは、例えば二人で一日この切符を使った場合は、「2日分」使ったということになり、残りは「3日分」になります。
五人で一日使った場合は「5日分」使ったことになり、その切符はもう使うことができないという具合になります。
今回は一人で使うので、本当に単純に5日間使えるということです。

青春18きっぷ

青春18きっぷはこのように1枚の切符になっており、「5日分」使うことができます。
5枚にバラして使うことはできません。
使うときは、車掌・駅員にスタンプを人数分押してもらい、その日一日使うことの証明とします。
(2人で使う場合はスタンプを2個押してもらい、青春18きっぷの“5日分”のうち“2日分”消費したことになります)

そして、大前提にして一番やっかいなのが、使えるのは「JR全線」ということです。
だから私鉄だと使うことができません。
東京や大阪には私鉄がいっぱいあるので、使えればもっと便利なところもあるでしょうが、JRが併走してる区間もあるのでまあ何とかなります。

問題は、地方。
JRが押し進めている「第三セクター化」により、かつてJRの路線であったところが分断されているところが意外と多くあります。
例えば、盛岡〜八戸間のIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道(注:2010年3月31日現在の情報に基づいて書かれています)。
盛岡から八戸や青森に行きたい場合、IGRいわて銀河鉄道や青い森鉄道を通ると青春18きっぷを使うことができず、別料金が必要になります。
意地でも別料金なんて払うものかと、例えば盛岡から大館に向かうJR花輪線で青森に行こうとしても、これも別料金が必要になります。
花輪線は、盛岡〜好摩間がIGRいわて銀河鉄道、好摩〜大館間がJR花輪線の線路となってるため、盛岡〜好摩間は別料金が必要なのです。
盛岡から青春18きっぷだけで青森に行くなら、田沢湖線を使って大曲(または、東北本線で北上、北上から北上線で横手)、奥羽本線を使って秋田を経由し青森に向かうという、恐ろしく遠回りなルートになってしまいます。

これは極端な例ですが、いつの間にか青春18きっぷが使えない路線を利用していることがあるので注意が必要です。

こうした青春18きっぷのルールと、各地のイベント開催日などを考慮し、日程を決めました。
スケジュールが決まってみると、やりたかったことがいろいろできる興奮と共に、あまりのキツさに旅の途中で死ぬのではないかという不安が。
当時の心境がちゃんと残されていたので、ここら辺は過去の日記に譲ります。

武器

今回は、実に様々な乗り物に乗ります。
メインの鉄道はもちろん、以前散々苦しめられた夜行バスも使用することになります。
今回の旅では、車中泊が何度もあるため、ここで寝られないと体力が回復できずに楽しめないばかりか、最悪体調を崩して旅行が中止になる危険すらあります。
特に、前回苦しめられた夜行バスについては、このまま何も手を打たずに敗北しては、一週間もたない可能性が大です。

そこで今回利用することにしたのが、店で売られている快眠グッズ。
寝ようと思えばどこでも寝られると過信していた人種なので、今まで見向きもしなかったのですが、こういう事態となっては仕方がありません。
少しでも快適に寝られるように、いくつか揃えてみることにしました。

まずは定番のアイマスク。
目の周りを覆い、明るい場所でも暗く感じさせてくれる優れものです。
前回夜行バスを利用したとき、カーテンの外から漏れてくる高速道路の外灯や、同乗者のケータイの明かりとかでなかなか眠れなかったんですね。
目をつぶってもどうにも落ち着かず、朝がものすごく遠く感じられました。
だから、逆に言えば、アイマスクで強制的に暗くしちゃえばいいのでは、と考え、今回は用意。

続いて、エア枕。
これは、空気で膨らませて、首の周りに巻いて枕にするというものです。
座席に座った状態で寝ると、首を預ける場所がほぼないため、どうしても首回りが痛くなりがちです。
最悪寝違えに苦しめられることにもなりかねません。
そこで、首を安定させることができるエア枕を使えば、安心して寝られるのでは、というわけです。

最後に、エア腰当て。
背もたれと腰の間に置くクッションです。
長時間座ってると、腰に負担がかかりがちです。
クッションをおけば、超長時間座ることになる青春18きっぷの旅でも安心だろうという次第です。

この三種の神器を携え、今回の旅に臨むことにしました。
これが成功すれば、ちょっとやそっとの長旅では怖くないことでしょう。

そして、今回もう一つ備えておいたのが、ケータイの予備バッテリーです。
過去の旅でも、常にケータイのバッテリー切れとの戦いを繰り広げてきました。
天気予報・交通情報の取得、目覚まし、ブログのチェックなど、便利に使えるが故に有限なバッテリーが壁となって立ちはだかります。
一応、残量が2本になったら基本的に目覚まし以外には使わず、1本になったら緊急用にバッテリーを残すために電源を切るなどしてきました。
ただ、今回は長旅で、いつ充電できるか分からない中、すぐ無くなるバッテリーで戦い続けるのは辛いと思いました。

そこで、予備バッテリー。
これで少しは不安も解消されることでしょう。

切符やホテルなどの準備も完了させ、いよいよ本番へ。

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2010年11月18日 公開