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ソード・ワールド2.0リプレイ はじまりの影(2) リプレイ1 「この村に未練はない」

物語のはじまり

3本の剣から創られたというこの世界では、その剣を巡って争いが続いていました。
平和と調和を求めた人族と、争いと開放を求めた蛮族との争いは、300年前、人族の勝利に終わり、ゆっくりと復興が進められています。
しかし、蛮族の残党は各地に残っており、脅威が完全には消え去ったわけではありません。
まだまだ不安定な状況が続く中、存在感を発揮しているのが冒険者でした。
村に襲いかかる蛮族を退治したり、歴史の中に埋もれた遺跡を探索したり、様々な役割を担っています。
そんな冒険者に憧れる若者がここにもいました。
山間の村・ビギン村。
物語はここから始まります。

ゲームマスター(以下GM):――というわけでセッションを始めていきます。今回、こんなにも多くの人に集まってもらえて僕は幸せものだよ。
ボッスン:プレーヤー2人しかいないけどな。
GM:うん……正直悲しい(笑)。せめてもう一人くらい集められるだろうと思ってたけど甘かった……。せっかくみんなが一度は憧れるであろう、剣と魔法のファンタジー世界を舞台にした「ソード・ワールド2.0」のルールに決めたんだけど、これは困った。プレーヤー2人じゃ戦闘が厳しすぎるだろうと(笑)。
スイッチ:せいぜい前衛と後衛1人ずつ置いてお終いだもんね。
GM:戦略も何もあったものじゃない。まあ、2人でも何とかクリアできるようにしたつもりだから、頑張っていきましょう。あと、「ソード・ワールド2.0」はこの前ルールブック買ったばっかりでまだ把握しきれてないから、途中止まったりルール間違ったりするかもしれないけど、温かい目で見てもらえれば。
ボッスン:あいよ。
GM:じゃあシナリオ始めます。ここはザルツ地方の中の小さな村です。ザルツ地方は温暖な気候の土地でで、蛮族の脅威もだいぶ薄れています。ザルツ地方と海を隔てた北側には蛮族たちがはびこる島があるけど、今のところは蛮族たちが侵攻してくることもないね。で、ザルツ地方最大の国としてルキスラ帝国があり、その北東に位置するカプティ山岳の麓にあるのがここビギン村になります。君たちはビギン村から出たことがないけど、いつかは冒険者となって世界を旅することを夢見ています。……といったところで、2人には自己紹介してもらおうか。
ボッスン:自己紹介?
GM:自分がどんなキャラかを紹介することで、今後のプレイをスムーズに進めるわけだね。
ボッスン:ふむ……。俺の名前はボッスン。人族の生まれで23歳の男。これまでの境遇は……「大失恋をしたことがある」「人に裏切られたことがある」って感じ。
GM:なかなか重いものを背負ってるな……。小さな村なのに。
ボッスン:俺はこの村でやっていけてるのか(笑)。
GM:じゃあ次スイッチ。
スイッチ:えー、名前はスイッチ。突然変異の種族ナイトメアで、24歳の男。経歴には「許嫁がいる」ってなってるよ。
GM:設定上、この村には同世代の女は1人しかいないんだが……。
ボッスン:ボッスンとスイッチは恋敵になるのか(笑)。なんという三角関係。
GM:ついでに言うと、友人の男の経歴も「大失恋をしたことがある」となっていてだな……。
ボッスン:三角どころか四角関係かよ!(笑)。
GM:しかも人族の両親から突然変異して生まれたナイトメアだからな。表面上はともかく、裏ではいろいろドロドロしてそう……この村には行きたくないね(笑)。
ボッスン:世界よりもこの村の方が先に滅びそうだ……。
GM:まあそれはさておき、2人はある噂を耳にします。昨日宿屋にある男が泊まりに来たけど、どうやら探し屋らしい。
スイッチ:探し屋?。
GM:冒険者に対して情報提供をする人だね。宝物がありそうな遺跡を探しだして、その情報を提供する代わりに冒険者から金をもらっているわけだ。で、その探し屋さんはビギン村の近くで遺跡を見つけて来たらしく、成果を上げた帰り道に村に立ち寄ったと。どうやら一仕事終えて上機嫌でいるようだね。彼はルキスラ帝国の首都からやって来た人だから、明日あたりにでもここを立つでしょう。
ボッスン:なるほど。
GM:現在朝10時ですが、どうしますか。
ボッスン:そりゃあ、その探し屋に会いにいくでしょう。友人のスイッチを連れて行きます。
GM:では2人は宿屋に行きます。宿屋は2階建てで、1階には受付と食堂、2階が宿泊部屋になってますね。受付のおじさんは、例の探し屋は2階奥の部屋にいると教えてくれます。
スイッチ:何してるんだろうね。
GM:受付のおじさんによると、かなり上機嫌で「酒寄越せー」とか言ってたようだから、部屋で酒飲んでるんじゃないかなあ。
スイッチ:じゃあ酒もっていこうか。
GM:(抜かりないなあ(笑))えー、ボッスンの家になかなかいい酒が置いてあるから、家に帰れば持ってこれますよ。
ボッスン:よし、持ってく!
GM:じゃあ、ボッスンの家で酒を手に入れた一行は、探し屋の部屋の前まで来ます。
ボッスン:ノックして、遺跡のことに関して話を聞きたいと言います。
GM:すると、中から人が出てきます。酒を飲んでて上機嫌な様子で、中に入るように促してきます。
ボッスン:入るついでに、持ってきた酒を渡します。
探し屋(GM):「お前、話が分かるじゃねえか!」
ボッスン:「ふっふっふ……」
GM:探し屋はすっかり打ち解けた様子で、2人にも酒を薦めてきます。
ボッスン:もちろん飲む。「かんぱーい」
探し屋(GM):「かんぱーい! 俺はマイケルっていうんだ。よろしくな。……ところで、どんな話が聞きたいんだ?」
スイッチ:えー、どこに遺跡があるのかを……。
ボッスン:いや待て。それはまだ早い。まずはその人のこれまでの仕事の成果を聞きたい。最初は相手を乗せないとね。
GM:(ボッスンの中の人はこういうとこ上手いよなあ。でもそんなことまで決めてないからこっちは困るけど(笑))……「よくぞ聞いてくれた!」とマイケルは身を乗り出して話してくれますね。
ボッスン:よしよし!
GM:(中の人は舌打ちだけどな(笑))……えー、ルキスラ帝国の西にフェンデイル王国というのがあって、その近くに「遺跡と花の丘」というのがあります。このあたりはかつての文明の遺跡が多くあって、その分遺跡は開拓され尽くしたと言われてたんだけど、彼は新たな遺跡をいくつも見つけて周りを驚かせたらしい。
ボッスン:ふむふむ。
GM:で、今度は、まだあまり開拓されていないと言われている北の方にも足を伸ばしてみようと、このカプティ山岳付近を探していたらしい。で、まだ手付かずの遺跡を見つけたのが昨日、というわけです。。
ボッスン:手応えとしてはどんな感じなの?
GM:今までの中で一番というわけではないけど、そこそこに手応えを感じているみたいだ。彼自身は、宝物の価値よりも遺跡自体を見つけることに喜びを感じる人だね。
ボッスン:じゃあここでマイケルに言う。「俺たちはそんな外の世界に出てみたいんだ」
マイケル(GM):「なるほどな。こんな小さな村じゃ、しがらみも多そうだしな」と言ったあと、ちょっと調子が変わるね。
ボッスン:なんだろ。
マイケル(GM):「ちょっと面白い話があるんだけど、聞かないか?」
ボッスン:お。
マイケル(GM):「お前ら、この遺跡を調査してみないか」
ボッスン:ほうほう。
マイケル(GM):「首都で冒険者に情報を渡す時は金を取るんだが、こんな村だしな。情報料は取らない。その代わり、中で宝物なんかを見つけたら、俺と半分ずつ山分けってことでどうだ?」
ボッスン:俺はもう飲んだ! やるぜ! と。
スイッチ:……半分か……。
GM:スイッチは何か問題が?
スイッチ:いや、マイケルと半分にしたら俺たちの取り分は更に減るかなって。
GM:マイケルが半分もらって、残り半分を2人に渡すって条件だからね。単純にいけば君たち1人あたりの取り分は元の4分の1ずつになる。
スイッチ:なるほど。いいよ。
GM:(いいのか。ゴネるのを期待してたが)じゃあ交渉成立だね。遺跡まではマイケルが案内してくれて、そこでマイケルはビギン村に撤収。遺跡の中の探索は2人が行い、ビギン村に帰ってきたところで成果物をマイケルと分け合うって形になる。今日は酒のんだから案内できないが、明日以降出発できる時になったら声をかけてくれれば遺跡まで案内するということです。
ボッスン:オッケー。

村の掟

順当に冒険への足がかりを掴んだ2人。
この導入がすんなりいったのは、GM的には一安心といったところ。
続いて、情報を求めて村長の家を訪れるが……。

GM:マイケルに別れを告げて、2人は村長の家に行きます。中からはお手伝いの女の人が出てきます。
ボッスン:明日、遺跡の探索に行くので、外に出るにあたってのアドバイスを聞きたいと申し出る。
お手伝いさん(GM):「あなたたちはこの村の掟を忘れたのですか!」
ボッスン:いや、知らんし(笑)。
GM:教えてないからね(笑)。この村では外には簡単に出てはいけない決まりになっている。基本的には村の中で自給自足の生活で、村を囲むように柵が張り巡らされています。もし外に出るなら、村長の許可がいりますね。
ボッスン:じゃあ、金渡して買収しようか(笑)。
GM:そうこうしてるうちに奥から人が出てきますね。「なんだ騒がしい」と。威厳たっぷりの白髪混じりのその男は村長です。
ボッスン:「明日、遺跡に探索に出たい。もし宝を見つけた場合には、村長にも献上します」
村長(GM):「ならぬ」と村長は拒絶します。この村は山奥に位置することもあり、かつて首都に出る人が後を絶たなかった。そのせいで村の人口は減少し、力が弱っていった過去がある。村長としては、迂闊に外に出して勝手に首都にでも逃げられては困るということもあるようですな。
ボッスン:では、この村のために金を稼いでくると言おう。
GM:村内で自給自足してることもあって、この村における金の価値はそんなに高くないんだよね。それだけだと村長を説得するにはちょっと弱いかな。
ボッスン:うむ。仕方ないな。闇夜に乗じて逃げるというのはどうだ。
GM:(お。そうきたか)
スイッチ:ん〜、どうなんだろ(笑)。逃げたら帰ってこれなくなるんじゃない?
ボッスン:俺はこの村に未練がないからな(笑)。別に帰ってこなくていいや(笑)。
スイッチ:いや、マイケルとの山分けがあるし!?
ボッスン:忘れてた(笑)。……じゃあ、マイケルのところに行ってもう一度交渉しよう。
GM:村長の家から宿屋に向かった2人は、再びマイケルに出会います。
ボッスン:「マイケル。さっきのクエストを買うのにいくらかかる? 遺跡までのマップが欲しいんだ」
GM:するとマイケルはちょっと面食らった様子だったが、首都に行ったら100G(ガメル。この世界の通貨単位)で売るつもりだったと言ってる。
ボッスン:よし、200Gで買うと交渉する。
マイケル(GM):「……もしここでマップを買ったら、宝の換金はどうするつもりなんだ?」
ボッスン:「……マイケル。俺たちはこの村を出て旅に出る。換金は旅先でする」
GM:ふむ。……スイッチはそれでいいの?
スイッチ:俺も別に村に未練はないかなあ。
ボッスン:いや、お前には許嫁がいるだろ(笑)。
スイッチ:そういえば(笑)。
ボッスン:俺はその許嫁に失恋してるからむしろ村をとっとと出たい(笑)。俺は1人でも行くぞ(笑)。
スイッチ:いや、ボッスンをほっとけないから一緒に行くよ。
GM:じゃあ2人とも村を出る決意が固いと見たマイケルは、200Gと引き換えに地図を渡します。遺跡まではここから2時間くらいだということですね。あと、遺跡の入り口に石像があったらしいんだけど、その石像の足元に彫られていた文字のメモを渡してきます。
ボッスン:なんて書いてるの?
GM:2人には読めないね。簡潔に何かが書かれてることは分かるけども。
スイッチ:そっか。
GM:マイケルは村にいる理由がなくなったので、明日の昼には村を出るという。
ボッスン:ちなみにマイケルは、ルキスラ帝国のどこにいるんだ?
GM:マイケルはルキスラ帝国の首都にいて、その中の「漆黒の影」っていう冒険の店に主に情報提供してる。そこに行けばマイケルに会えるね。ちなみに冒険の店は冒険者たちの拠点で、そこで情報をやり取りしたり宝の換金を行ったりする。
ボッスン:なら、遺跡から出た後はそこに行こう。

突破口を求めて

故郷を捨てる覚悟を決め、今後の旅の方針も決まった2人。
後は村からの脱出経路をどうやって確保するかが問題となった。
GMとしてはここまでのところで、正面突破は難しいという状況を提示したつもりだった。
では、別ルートはどこにあるのか。
『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』といった王道RPGが好きな2人なら、RPGの基本である「聞ける人にひと通り話を聞いてみる」を行うと踏んでいた。
そこで、ある人に話しかければいとも簡単に脱出できるように仕掛けていたのだが……。

ボッスン:GM。この村の入口の「詰所」っていうのはなんだ?
GM:村長の許可なしに村から出る人がいないか確認する場所だよ。ついでに言うと、村は柵で囲われてて、入り口は門のようになっている。
ボッスン:詰所の人数は?
GM:1人。
ボッスン:強さは?
GM:……………………。
ボッスン:ふふふふふ(笑)。
GM:……(この展開は全く想定してなかったなあ(笑))
スイッチ:実際にやったらすごい騒ぎになりそうな気がする。
GM:今やるの?
ボッスン:いやいや、確認確認。
GM:この村は長いこと襲われたりしてないから、あまり強くはない。もっと言うなら、君たちは外の世界に憧れを持ってるから影に隠れて戦闘の訓練をしてたけど、そんな君たちの目からは詰所にいる人たちの訓練は生ぬるく見える。他に村について聞きたいことあればどうぞ。
ボッスン:抜け穴的なものは?
GM:少なくとも、君たちは聞いたことがないね。
ボッスン:周りの柵は何でできてる?
GM:んー、木プラス有刺鉄線だと思ってもらえれば。
ボッスン:高さは?
GM:まあ、高さ3メートルと思ってもらえれば。
ボッスン:柵でどっか途切れているところは?
GM:2人が記憶してる限りでは、途切れているところはない。唯一途切れているのは村の門だけだったと、2人は記憶している。
ボッスン:やっぱり飛び越えるしかないかなあ。
スイッチ:詰所の上によじ登るっていうのは?
GM:(笑)。言っとくけど、柵まで距離あるから飛び越えられないよ。
ボッスン:この村の家の材質は?
GM:…………木。
ボッスン:当然家にかまどはあるはずだから……。
GM:(家燃やす気か(笑))
スイッチ:柵壊せないの?
GM:んー……10分くらいで壊せるけど、その間に物音を聞きつけて誰かがやってくるよ。
ボッスン:なら……詰所には夜も人がいるの?
GM:いるよ。
ボッスン:交代時間は?
GM:そうねえ…………だいたい3時間おきに交代ってことで。
ボッスン:我々が門番をする機会は?
GM:25歳以上の人がやることになってるので、当分ない。……ちなみに同世代の友人が3人いるけど、彼らの年齢は20、21、22。
ボッスン:残念。
GM:ついでに彼らのプロフィールも紹介しておこう。

レイナ
女 20歳 人族 魔法使い

タスト
男 21歳 人族 一般人

ロゼ
男 22歳 人族 傭兵

この幼なじみ3人は、身も蓋もない言い方をすれば、2人しかいないプレイヤーを援護する戦闘用NPCの位置づけである。
もし連れて行かなかったとしても敵の数などで調整するつもりではいたが、さすがに2人だと戦闘に面白みがなさそうだったので、プレイヤーの希望に応じて連れていけるように配置しておいた。
さて、このプレイヤーたちの反応は。

GM:スイッチとボッスンの設定からいくと、許嫁であり失恋の相手でもあるのがこのレイナだね。
ボッスンおー、ついにきた。
GM:さらに言うと、ロゼの経歴も「大失恋をしたことがある」となっているので、ロゼの失恋相手もレイナです。
ボッスン:この人間関係はやばいな(笑)。
GM:レイナは好奇心旺盛で魔法が得意。タストは戦闘にあまり力を入れてないけど、様々な知識が豊富だね。ロゼはこれまで剣術を鍛えており、経歴には「子供の頃に家出をしたことがある」というのがある。
ボッスン:子どもの頃じゃなあ。村を脱出する参考にならなさそうだな。
GM:…………。

その後、許嫁のレイナを取り込もうと自宅を訪ねる2人。
遺跡の探索のことを話すとレイナはすぐに付いて行くと話すも、村の脱出のことについては有力な情報は得られなかった。
続いてタストの家を訪ねる。
タストに遺跡のことを聞くと、この辺りの遺跡はあまり見つかっておらず、今回の発見はすごいことだと遺跡に対する興味を示した。
遺跡の中の探索は足手まといになるからと渋るタストを説得した2人は、タストならマイケルから渡されたメモを読めるのではないかと考える。
タストにメモを渡すと予想通りタストは読むことができ、「バルトゥーの屋敷」と書かれていることを教えてくれた。
バルトゥーとは300年前の魔動機文明時代の魔法生物学者で、これまであまり資料が見つかってこなかったと解説してくれる。
幼馴染2人を説得し、残るはロゼのみとなる。

ボッスン:さて、あとやることはないかな……。
GM:えっ、ロゼのところに行かないの?
ボッスン:ロゼとはなんか話が合わなそうだ。
GM:なんだそりゃ(笑)。
ボッスン:まあ、情報もだいたい手に入ったことだし、そろそろ村の脱出方法を決めたい。俺はやっぱり詰所を襲撃して門の鍵を奪うのが一番だと思う。詰所に門の鍵はあるのか?
GM:あるよ。
ボッスン:よし。じゃあその鍵を奪って闇夜に乗じて脱出しよう。
GM:ただ、君たちは詰所の中のどこに鍵があるかを知らないから、このままだと詰所に入っても鍵を探すのに時間を取られるね。
ボッスン:ふむ……。なら、事前に下見に行こう。詰所のおっちゃんと会話してる間に、詰所の中を見渡して鍵のありかに検討をつけるってことはできないか?
GM:そういうことなら、1人が話をしてる間に、もう1人が〈探索判定〉をして成功したら鍵のありかが分かったことにしよう。
ボッスン:なら詰所に向かう。「ちーっす」
おっちゃん(GM):「おう。こんなところに何のようだ?」
ボッスン:「いやあ、俺たちもいずれこうして門番をすることになるから、今のうちに勉強しとこうと思ってな」
おっちゃん(GM):「勉強も何も、椅子に座ってボーっと見張ってるくらいしかやることねーぜ」
ボッスン:「はっはっは」……とか会話をしてる間に、鍵を探りたい。
GM:じゃあスイッチに〈探索判定〉してもらいます。サイコロを振って出た値に応じて成功・失敗を決めるのがこの「行為判定」ね。〈スカウト技能レベル〉に知力ボーナスを加えた値がボーナスポイント、それに6面ダイスを2個振って足した値が「達成値」になる。ここでは10を「目標値」としよう。「達成値」が「目標値」の10以上になれば成功ってことになる。
スイッチ:ここで〈スカウト技能〉が役に立つのか。〈スカウト技能レベル〉が1で、知力ボーナスが2だから、3のボーナスポイント。じゃあ、サイコロ2個振って7以上なら成功になるわけか。
ボッスン:頼むぞ〜。
スイッチ:じゃあ振りまーす。コロコロ……10。つまり「達成値」は13だね。
GM:じゃあ成功。スイッチは鍵のありかに検討をつけることができました。入り口の脇に鍵があるだろうと分かりました。
ボッスン:じゃあとっととずらかろう。「またな〜」
おっちゃん(GM):「お前らもあんまり仕事サボってるんじゃねーぞー」

あまりやる気はなさそうだが詰所には常に人がいるということで、迂闊に鍵を奪える状況ではない。
そこで、夜の門番たちをレイナの家から観察して統計データ化。
最もうたた寝してる時間が長い門番を狙って詰所に忍び込むという計画を提示してきた。
さすが普段大学でデータ処理・統計処理に泣かされる日々を過ごしてきたメンバーの発想といえよう。
面白いアイディアだったので喜んで採用し、3日分のデータがあれば検討がつくこととした。
夜はレイナの家でスイッチとレイナが観察、昼はタストがデータ分析にあたる。
そしてついにデータが揃い、タストが出した結論は……。

タスト(GM):「うん。最も寝てる門番が分かったよ」
ボッスン:おお〜。ついに。
GM:タストによると、明日の深夜0時〜3時に見張りをする門番が一番寝る時間が長いらしい。なんでも、詰所に枕を持ち込んで最初から寝る気満々の姿勢であり、3時間のシフトのうち2時間半は寝て過ごしているそうだ。
スイッチ:仕事しなさい(笑)。
ボッスン:ともかく、これで脱出の目処は立った。明日1時頃に詰所を襲撃。鍵を奪ってそのまま門を開けて脱出しよう。
GM:じゃあ、このままレイナとタストを連れて村を脱出するってことでオーケー?
ボッスン:待った。2人に決断を迫るべきだ。もう村に戻れなくなるわけだからな。
GM:(! ……しめしめ。いいことを思いついたぞ)
ボッスン:「レイナ、タスト。いよいよ村を捨てることになる。2人にはその覚悟があるのか?」
タスト(GM):「うん。未知の遺跡が目の前にあるんだ。ここまで来たら新しい世界を見てみたい」
レイナ(GM):「…………」
ボッスン:お?
スイッチ:あれ? レイナは?
GM:どうやらレイナは、いざそんな風に覚悟を迫られると、ちょっと尻込みしてしまったようだ。
ボッスン:……スイッチ、いけ。
スイッチ:え?
ボッスン:レイナを後押しするんや。
スイッチ:なっ、なにそれ?
GM:(ニヤニヤ)
ボッスン:だって、1人は役にたたない一般人だから、魔法使い欲しいもん。
GM:(そっちかい(笑))
ボッスン:さあ、お前が説得するんや! プロポーズだ!
スイッチ:……………………「いざっていう時は僕が守るから、一緒に冒険に行こう」
レイナ(GM):「…………わかった」
ボッスン:なんか聞いてるこっちが恥ずかしくなるな(笑)。
GM:レイナは胸を打たれたようで、しっかり頷いてくれたね(笑)。
ボッスン:そして俺の胸にはえも言われぬモヤモヤが……と(笑)。

村からの脱出

いよいよ作戦決行の時となる。
レイナの家に待機していた4人は、深夜0時に例の門番に交代したのを見計らって行動を開始することになる。
スイッチ以外の3人は馬小屋に移動して待機し、鍵の場所を知ってるスイッチが鍵を奪ったのを見計らって、合流して村を脱出という計画である。

GM:門番が例の門番に交代され、いよいよ脱出計画開始の時。……ボッスン・スイッチ・レイナ・タストの4人で行くのね?
ボッスン:ああ。
GM:(……結局ロゼの出番はなかったな……)では3人は馬小屋に無事到着。スイッチは詰所に向かうってとこかな。
ボッスン:本作最大の見せ場がやってきたぞ(笑)。
スイッチ:長かったなあ。
GM:(正直、村脱出まで2時間半かかるとは思ってなかった……)スイッチが詰所のそばに行くと、外まで響くほどのいびきが聞こえてきます。どう考えても中の門番は寝てる状況ですね。 スイッチ:じゃあ鍵を奪う。
GM:ではここで判定をしよう。一応〈スリ判定〉を使うってことで。「目標値」は4。ぶっちゃけ、サイコロが両方1が出た時に起こる「自動失敗」にならなければ成功します。
スイッチ:ファンブルみたいなもんか。
GM:つーことで振ってみよ〜。
スイッチ:コロコロ……。1と……6。
ボッスン:あっぶね!(笑)。
GM:まあ成功ね(笑)。一瞬いびきが途切れてドキッとするも、何事もなかったかのようにいびきが続いてホッと一息。鍵は無事に奪えました。
スイッチ:じゃあ3人と合流しよう。
ボッスン:うっし! 村を出るぞ。
GM:無事に4人は合流できて、門の前まで来ます。
ボッスン:鍵を使って門を明けるぞ。
GM:鍵を使うとすんなり門は開きます。外は暗いものの、これまで見たことのない新世界への道ってとこだね。
ボッスン:よし、出る。
GM:寝静まった村から誰にも気付かれずに脱出する4人。果たしてこれから4人を待ち受けるのは何なのか……。ということでやっと本編(笑)バルトゥーの屋敷編だ!

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2012年12月31日 公開